エクセル本来の長所を無視する、役所のエクセル方眼紙

エクセルの本来の使い方は、「大量のデータを簡単に取り扱う事」にある。ただ、エクセルは一見すると設計の自由度が高いためだろうか、どうしても「困ったファイル」が後を絶たない。その典型例が、役所系のウェブサイトで公表されている「エクセル方眼紙」だ。

普段から当ウェブサイトでは、おもにエクセルを使ったさまざまな「便利技」を紹介することに努めているが、本日は少し毛色を変えて、「なぜエクセルを使うのか」、「エクセルを使うことの本当の意味」について、少し考えてみたい。

私見に基づけば、エクセルの長所はいくつかあるが、その最たるものは「大量のデータを簡単に取り扱うことができる」、という点だ。

たとえば、たくさんの数値を入力した際、いちいち電卓を叩かなくても、「SUM関数」を使えば一発で合計を入力することができる(※余談だが、よく「エクセルの計算式を電卓で検算する」という人がいるが、非生産的なので絶対にやめておいた方が良い)。

また、少し関数が使えるようになってくると、「条件が一致した場合に、その一致する行のみを集計する」(たとえば「SUMIF関数」)などの使い方もできる(詳しくは『条件付き集計で計算も楽々!SUMIFの基本を覚える』等参照)。

さらには、INDIRECT関数を使えば、一定の条件で入力されたシートにおいて、セルの「番地」を特定するという形で、目的の値を効率的に取得することだって可能だ(『「セル番地」を特定し、簡単にタテヨコ変換する超絶技』等参照)。

つまり、エクセルは「画一的なデータを大量に扱う」ことに非常に向いている、というわけだが、ただ、ここで注意していただきたいことがある。

言い換えれば、エクセルは、「画一的でない情報」の処理が苦手だ、ということだ。

こうしたなか、「エクセルの達人」から見て、最も警戒すべきは、「エクセル方眼紙」――、すなわち「1つのエクセルのシートを立ち上げ、まるで方眼紙であるかのごとく使用する」という「技法」(?)である。

いや、「技法」と呼ぶのもおこがましい。

エクセルの特徴を知らぬ者が「ドヤ顔」をして作成しているケースが多く、そして、これらの「方眼紙」を提供しているのは、役所やそれに類する組織に多い。その典型例が、日本年金機構のファイルだ。

図表1 日本年金機構のファイル

(【出所】日本年金機構『主な届出様式の一覧』のページに掲載されているエクセルファイル

いかがだろうか。

端的にいえば「意味不明」という代物だろう。

こうしたなか、一部のサイトで話題になっていたのが、経産省『「クリーンエネルギー自動車の導入補助金」について』というページからリンクを張られた、「一般社団法人次世代自動車振興センター」という組織のウェブサイトの『令和3年度 CEV補助金(車両)のご案内』というページのこんなファイルだ(図表2)。

図表2 一般社団法人次世代自動車振興センターのファイル

(【出所】一般社団法人次世代自動車振興センター『令和3年度 CEV補助金(車両)のご案内』のページに掲載されているエクセルファイル

いずれも、データ処理というエクセルの本来の役割から大きく逸脱したものと言わざるを得ない。

日本の役所は、まだまだ「働き方」等の意識改革が必要なのだろう。