STDEVA関数を使えば、「工業生産」にも応用可能

当ウェブサイトではエクセルを業務で使い倒そうとする試みをいろいろ紹介しているが、こうしたなか、少し変わったエクセルの高度な使い方を紹介しよう。それが、確率統計論の考え方を応用した、「母集団の標準偏差の推計」である。いったいどういう技であるか、説明したい。

「エクセルは幼稚で初歩的だ」という誤解

エクセルといえば、少し前までは、たいていのPCには事前にインストールされていた。

現在ではオフィスを購入しないとエクセルを使用することはできないようだが、それでも、多くの会社で支給されている業務用のPCだと、たいていの場合は事前にインストールされている。オフィスワーカー系の社会人であれば、誰しも1回や2回はエクセルを立ち上げたことがあるに違いない。

ただ、この「誰でも使用できる」という気軽さのためだろうか、エクセルには「初歩的」、「高度な計算にそぐわない」、といったイメージが付きまとうのも事実だろう。エクセルだと大した計算ができない、実用向きではない、などと考えている方も多いのではないか。

エクセルで標準偏差も楽々計算

だが、ちょっと待ってほしい。

「エクセルは幼稚だ」などと考える方は、エクセルを使ってどこまで複雑な計算ができるか、試してみたことはおありなのだろうか。

じつは、エクセルは工業生産において、非常に強い威力を発揮する。その典型例が、「STDEVA関数」である。これは、「一定の数の値をもとに、その母集団全体の標準偏差を予想して返す関数」と定義されている。

STDEVA関数とは?

一定の数の値をもとに、その母集団全体の標準偏差を予想して返す関数

これだけだと、「なんのこっちゃ」と思われる方も多いが、べつに難しい話ではない。

「単純平均だとわからない、その集団における値のバラツキ度合い」を示すものが、この標準偏差だ。

架空の中学3年生男子の設例

たとえば、ある中学校の3年生のクラスが2つあり、そこに男子が10人ずつ在籍しているものとする。A組、B組の各人の身長が、それぞれ次のとおりだったとしよう。

A組男子10人の身長
  • A君…165cm
  • B君…170cm
  • C君…170cm
  • D君…168cm
  • E君…150cm
  • F君…148cm
  • G君…159cm
  • H君…159cm
  • I君…179cm
  • J君…132cm

 

B組男子10人の身長
  • K君…160cm
  • L君…160cm
  • M君…160cm
  • N君…160cm
  • O君…160cm
  • P君…160cm
  • Q君…160cm
  • R君…160cm
  • S君…160cm
  • T君…160cm

(【注】データは架空のものである。)

さて、A組、B組それぞれの男子の平均身長は何cmか。

答えは、A組、B組ともに、「身長は160cm」、だ。

ただ、A組は最も低いJ君が132cm、最も高いI君が179cmと、両者の「高低差」は47cmにも達するのに対し、B組の場合、全員がそろいもそろって160cmであり、「高低差」は存在しない。

つまり、単純平均値で比較してしまうと、A組もB組もまったく同じ身長であるように思えてしまうが、たとえばある業者が「A組もB組も男子は平均身長が160cm」という情報だけで身長160cmの生徒しか着られないTシャツを作ってしまうと、A組の男子には1着も売れない、という事態が発生するかもしれないのだ。

実際にSTDEVA関数で計算してみた

もちろん、現実に商品開発と設計、生産と販売の実務においては、「中学3年生男子」をターゲットにしているようなケースにおいて、平均身長だけでなく、その「中学3年生男子」という集団の身長の「バラツキ」を予測しなければならない。

そして、現実の社会には、身体的特徴には人それぞれ個性があることが通常であり、「中3男子は全員160cm」などという、B組のようなクラスなど存在しない。

現実に「中3男子」をターゲットに商品開発をするならば、平均身長の160cmからどこまで逸脱して良いかの範囲を決めなければならないのである。

では、その「範囲」をどうやって決めれば良いか。

エクセルの「STDEVA」関数を使ってみると、A組の場合は「標準偏差は13.66cm」、B組の場合は「標準偏差はゼロ」と求まるはずだ。ただし、B組のようなクラスは存在しないので、図表1図表2では、A組のみについて求めている。

図表1 STDEVA関数の入力

図表2 SDTEVA関数の入力結果

この場合、平均身長自体は160cm、標準偏差は13.66cmと求まる(※ただし、本稿におけるデータは架空のものであるので注意されたい)。

この計算結果が意味するところは、こうだ。

この母集団の平均身長は160cmだが、約68.27%の確率で、この平均値から13.66cmほど逸脱している生徒が存在している」。

ここで、「約68.27%」のことを「1標準偏差(いちひょうじゅんへんさ)」、ないしは「1σ(いちシグマ)」と呼ぶ。

σを拡大すれば良い

つまり、ある企業が中学3年生男子をターゲットに商品設計をするならば、身長160cmから上下13.66cmの生徒が着られるような商品を作れば、それは中学3年生男子全体の68.27%にフィットする、ということを意味している。

同様に、その「フィットする範囲」を「中学3年生男子」の95%にまで拡大したければ「2σ(にシグマ)」、つまり先ほどの1σ値を2倍した上下27.32cmまでの誤差を許容してやれば良い。99.9%にまで拡大したければ「3σ(さんシグマ)」だ。

逆算で、「99%」の範囲を「2.33σ」と呼ぶこともある。

すなわち、確率統計の考え方は、現実の産業においてもかなり活用されているわけだが、エクセルを使えばその計算も楽々である。

是非、実務の参考にしていただきたい。